朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第247回2015/12/10

 主人公の正確な年齢を知っても意味はないと思うが、60歳代の前半という印象を持っていた。だが、最近の回からは、私とほぼ同年代、つまり60歳代の中頃から後半の感じがする。どちらでもよいようだが、私にとっては、65歳未満か、65歳以上かで違うと感じる。いろいろな面で、区分される65歳という年齢は、制度上のものだけでなく、実感として違うし、現代の日本では、団塊の世代かその後の世代かで違いがあると思う。

 この回の風景は、今の日本の65歳以上の広岡と氷見、そして、若い佳菜子の取り合わせで、おもしろみが増す。これが、60歳の広岡と、50歳代の氷見ではかなり違う風景となる。
 それほどに、65歳以上の人は多いし、今後はその人々の存在が重くなってくる。
 自分たちの居場所を、自分たちで作ろうとする老人たち、その老人たちは、自分たちの好みも通そうとする。それを嫌がらずに共にいる若い女性。これが、この回の風景だ。
 氷見は、今までの登場人物の中で、広岡に一番近い感覚を持った人だとも感じる。